アメリカキャンプ村物語〜前編〜 (7.25.1999)

午前5時、目が覚めた。
目覚まし時計は5時10分に鳴るようにセットしてあるのだが....。
りえのすけは、時計の目覚ましベルが鳴る前に、起床することに快感を覚える性格なのだ。
-----変な性格!

歯を磨き、顔を洗い、出かける準備をする。
窓の外は、まだ、朝の5時だというのに、すでに明るい。
日射しはまさに夏である。2日前の23日に梅雨明けをしたばっかりなのだ。
朝食をとらずに出かけることにした。
東武伊勢崎線 武里駅。
りえのすけの利用する駅である。
午前6時ちょうどの電車に飛び乗った。

きょうは会社の連中と、バーベキューをすることになっているのである。
しかも、場所は東京都の西のはずれ、奥多摩である。
-----なんで、そんなに遠いところなのだろうか?疑問に思われることだろう。
  話は長くなるので、省略するが、要は自然がある所、設備がある程度整っている所、遊べる施設がある所。
  その結果、候補地に選ばれたのが、奥多摩のアメリカキャンプ村なのである。


では、なぜ、りえのすけはそんなに朝早く出かけるのか?
それは............................................................................。
バーベキューをやるための河原の場所取りなのだ。
先発隊、場所取りのA班-2名
スーパーで、食材を調達するB班-3名
そして、優雅な到着のC班-6名
以上、3班に分かれての集合なのだ。

東武線 新越谷駅にて、JR武蔵野線 南越谷駅に乗り換える。
券売機で「奥多摩とくとく切符」を2,100円にて購入。
-----片道1.570円かかるところ、この切符は往復で940円もお得なのだ。

西国分寺駅にて、乗り換えをし、立川駅に向かう。
立川駅5番線ホームに7時5分ごろに到着。
駅員に奥多摩行きの直通電車は何番線か、尋ねると2番線ホームらしい。
2番線ホームで発車時刻を確認すると、発車時刻は7:39。
まだ、時間はたっぷりあるなぁ〜、と携帯で酒井実行委員長にTELしてみる。
『もしもし、今、どこですか?』
『今、立川駅の2番線ホームの階段を降りるところだよ。』
電話で話していると、階段を降りてくる酒井実行委員長を発見。
この人が、りえのすけを先発隊、場所取りのA班に引っ張り込んだ張本人なのだ!!!!!
-----うぅぅ、優雅な到着C班が良かったのに〜。
  酒井さんはこのバーベキュー大会の実行委員長なのである。

『早いんじゃない?』
『接続が良かったみたいです。』と、先輩には丁寧な口調のりえのすけなのである。
『時間もあるし、朝食を取っていないので、立ち食いそばを食って来ます!』りえのすけ
『俺も食べるよ!』酒井さん。
反対側3番線ホームに立ち食いそばの暖簾が見えるので、再び、階段をのぼることに。

お世辞にもあまり、おいしくはなかったが、ようやく、お腹も落ち着いて来たようだ。
りえのすけは早く食べ終わったので、店の外に。
酒井さんは「ねこ舌」なので、食べるのが遅いのだった。
ふと、さきほどの2番線ホームの方を見ると、
なんと、そこには「奥多摩そば」という立ち食いそばがあるではないか!
------灯台もと暗し、とはこのことだ。何か不安な影が忍び寄ってくる気配を感じはじめる。

再度、階段をのぼり、売店で酒井さんはビール、りえのすけはウイスキーを購入。
朝、早かったので仮眠のためのアルコール摂取なのである。
立川駅から奥多摩駅まで各駅停車なので、1時間9分もかかるのだ。

すでに、奥多摩行きの電車は入線しており、2人は前から2両目に向かって走る。
この2両目というのは、重要なポイントなのである。
酒井さんの入念な下調べの結果、目的地のアメリカキャンプ村には徒歩で30分もかかるらしい。
しかし、タクシーを使えば、5分ぐらいらしいのである。
しかも、奥多摩駅にはタクシーが3台しかないことが、調査の結果、判明しているのである。
時は7月下旬、夏本番の日曜日、まさしく行楽日和の上天気なのである。
もし、奥多摩駅でタクシーに乗ることが出来なかったら、この炎天下を30分も歩かなければならない。
これだけは絶対に避けなければならないからなのだ。
A班2名の最大目的は、バーベキューをするための河原の確保なのだから。
-----場所確保が出来なければ、後発組に申し訳が立たないのだ。

山々が近づくにつれて、行楽客の人数が増えてくる。
そして、ようやく、終点の奥多摩駅に到着する。
りえのすけ酒井さんはドアが開くやいなや、改札口にダッシュする。

But、ダッシュしたのにもかかわらず、
タクシー乗り場には、あるべきはずの肝心のタクシーが1台も無かったのである。
混んでいて、前の電車のお客が乗っていったばかりなのか。
しかも、いるはずのない優雅な到着組-C班内藤水先案内人がそこにいるではないか?
-----内藤さんはC班の引率責任者であり、りえのすけの直属上司なのである。

『おはようございます!』と、りえのすけ酒井さん。
『タクシーはいなかったよ!』と、内藤さんの答え。
『どうしたんですか?後発のC班だったでしょ。』
『んっ?まぁ、南武線ルートの方が、楽だったから....。ちょっと、早すぎたけど。』
タクシーを待とうか、歩くことにするか、検討していると
すーと、1台のタクシーが3人の前に止まった。

アメリカキャンプ村まで!』
『はいよ!』
と、タクシーはすぐに出発する。
『やっぱり、時期的に忙しいの?タクシーが全部出払っていたようだけれど。』
『1台しか、ないからね〜。』
『えっ、3台あるんじゃないの?』
『不況だからね。赤字続きで、今は1台だけだよ。しかし、キャンプ村に行く人は初めて乗っけたなぁ〜。』
『なんで? 皆、歩くの?』
『まぁ、だいたいは車で来るか、キャンプをやる人ばっかりだから歩くんでないのー。
歩くとしても42分かかるけんどね〜。』
-----観光地も大変なんだなぁ〜。と、妙に感心したが、なんで42分なんて細かい数字が出てくるんだぁ?


5分ほどでアメリカキャンプ村に着いたが、歩くとなると起伏が激しく、たしかに42分はゆうにありそうだ。
さっそく、バーベキューをやる河原の確保に走る。
よかった。一番乗りだ。
しかし、思ったほど、大きな川原ではない。
持って来たレジャーシートを広げて、場所をGET。
鉄板や網を固定する大きめの石を並べる。
が、太陽の動きを見ると、この場所では数時間後には直射日光をまともに浴びることにりえのすけは気付く。
-----冷静な判断だ!

再考していると、そこからちょっと離れた水際が絶好のポジションであることが判明。
真上には木々が生い茂っており、陽も避けられるだろう。
ふたたび、大きな石を移動させ、バーベキューの準備をする。
汗が吹き出してくる作業だ。
酒井さんは長めの棒を拾って来て、穴を掘ったりしてマメな行動をする。
そういえば、酒井実行委員長は学生時代、山岳部だったと聞いている。
頼もしい人だ。
-----しかし、この頼もしさが、仇になることにりえのすけは気がつかなかったのである。

流れる汗を拭いながら、
『ふぅ、準備は終わりましたね。あとは、食材調達のB班、優雅なC班を待つだけですね!』りえのすけ
『なんとか、形にはなったね!』酒井さん。
..............。何故か、多くを語らない内藤さん。

内藤さんの口からようやく言葉が出た。
りえのすけを見つめながら、
『君は8月2日付けで、異動なんだよ!』
『えっ〜〜、本当ですかぁ〜〜。』りえのすけ。
『嘘は言わないよ。それを伝えるために早く来たのだから。』
..............。
今度はりえのすけが沈黙する番だ。

『休みの都合上、顔を合わせる機会がないし、電話で伝えるよりも、直接、伝えたかったから....。』内藤さん。
-----そうなのである。7/15〜8/20までは日曜日が夏季休業となり、日〜水曜組、木〜日組のふた手に別れるので
  1ヶ月間、顔を合わせないメンバーも出てくるのである。心優しい内藤さんに頭が下がる思いである。

実は、りえのすけは入社以来、異動転勤の経験がないのであった。
内藤さんにはりえのすけがかなり、落ち込んでいるように見えたのだろう。
『近いから、大丈夫だよ。異動なんて、一度は経験しておくべきだよ!』内藤さん。
『それから、そうそう、酒井くんも異動だよ!』
『えっ〜〜〜〜。』と、言って、のけぞる酒井さん。
『嘘だよ〜〜〜。』と、茶目っ気な内藤さん。
-----酒井さんはこの4月に千葉店から異動になったばかりなのである。

しかし、りえのすけは異動はいつかするものであると普段から思っているので、異動そのものには動揺はしない。
むしろ、この異動のおよぼす影響で、今期の営業成績の達成が不可能になるのではないか!などと、
冷静な分析をしていたのである。
-----なんて、数字にこだわるりえのすけなのだ!
  しかし、異動そのものに少しは、ショックだったことはゆがめないだろう。

『まっ、きょうはせっかくのバーベキューなのだから、大いに盛り上がりましょう。』酒井さん。
『そうですね。送別会も兼ねますか!?』と、自ら奮い立とうとする健気なりえのすけであった。
『そろそろ、食材調達B班が到着すると思いますから、大井田副委員長に携帯してみましょう!』りえのすけ

長い呼び出し音ののち、
『もしもし、池田です。』の声が。
-----大井田さん運転するB班には池田記憶失い隊渡辺サバイバーが同乗しているのであった。
『もうすぐ、アメリカキャンプ村に到着する予定です。現在、坂道をのぼっています。』
『OK。待っていま〜す!』りえのすけ

それでは、優雅な到着C班小林カラオケ隊長に電話してみるか。たぶん、タクシーに乗っている頃かな。
あれ、出ないよ〜。また、Bagに携帯入れっぱなしか〜?
では、新人の岩崎サッポロ隊の携帯に電話してみよう。
『もしもし、岩崎で〜す。』
『もしもし、タクシーの中?』
『いいえ、奥多摩駅でトイレ休憩したら、タクシーはどこかに行っちゃいました〜。
しょうがないから、皆で、歩いてま〜す。』という元気な声が返って来た。
『歩くと言ったって、40分ぐらいかかるってタクシーの運ちゃんが言っていたよ〜』
『けれど、もう坂を上っていますから、もうすぐ、着くと思いま〜す。』

数分後、シルバーの車が到着。
りえのすけは駐車スペースに誘導し、
『お疲れさま〜』と、ドアをあけるとB班3名のほかに岩崎サッポロ隊の姿が.....。
『途中、歩いていたから拾って来ました。』池田くん。
『他のC班のメンバーは?』
『見なかったですね〜』渡辺くん。
『私、どんどん先を歩いてきてしまったみたいです。』岩崎さん。
『まっ、お疲れさま!大井田さんもごくろうさん!』
『あっ、おはようございます。結構、道は空いていましたよ。』大井田さん。

トランクからバーベキューセットや食材などを下ろし始めることにした。
かなり、買い込んだきたようだ。
皆で、運んでいると、優雅な到着だったはずのC班が到着。
山口親父ギャグ隊柳田日本酒隊小林カラオケ隊大曽根ビール隊の4名だ。
『おはよう!けっこうあるねぇ。40分ぐらい歩いたよ!』山口さん。
『お疲れ様でした。タクシーを待っていれば良かったのに......。』りえのすけ
『いや、歩くのも気持ちがいいかなぁ、なんて思って......。』柳田くん。

手分けして、荷物の運搬をはじめる。

そして、現場に残っていた内藤さん、酒井さんと合流。
まずは、冷えたビールで再会の乾杯!
-----夏休みだから、1週刊ぶりに顔を合わせた人もいるのだ。
B、C班の連中がりえのすけに近寄って来て、
『聞きました?』
『えっ、なに?異動のこと?聞いたよ!
まさか、奥多摩で聞くとは思っていなかったよ〜!バーベキュー大会が送別会になっちまったよ。』
『そんなことはないですよ!バーベキューはバーベキュー。送別会は別に設けますから〜。』
-----うぅぅ〜。なんて、いい連中だぁ。けれど、皆、飲みが半端じゃないからなぁ。送別会は飲まされるか?
  喜んでいいのか、悪いのか、3階でいいからと思いながら、まことに複雑な心境である。


軽い乾杯の後、
野菜洗い組、食材ならべ組、炭火起こし組に分かれて、それぞれの職務を遂行。
炭を焼くのにけっこう時間がかかったが、やがてそれも無事に点火。

さぁ、バーベキュー大会の始まり、始まり。
肉がおいしい。野菜もグー。
自然の中の食事は最高だぁ〜。
ビールもウマ〜イ!!
グイ、グイ飲めるぞ!

しかし、水辺に近い場所に陣取ったためか、川原で遊ぶ小さな子供たちの水しぶきがかかる〜。
-----これは唯一の失敗か。

みな、食べるは飲むはでおおはしゃぎ。
さきほどまでいた子供たちも、下品?な大人たちのパワーに圧倒されたのか、姿を消していったのである。
         

    

朝、早くやって来たりえのすけはビールを飲み過ぎたこともあり、お昼寝タイムに突入。
日射しが、いつの間にか、顔を照りつけりえのすけがお昼寝から目覚める小一時間の間に
その事件は起こったのである。
題して、「真夏の悪夢ちんちん電車事件!」

聞いた話を総合すると、
川原の上流には小さな滝があり、酔いと暑さのあまり、約2名の者がすっぽんぽんになり
奇声をあげながら、滝に打たれたというのである。
その奇声に何事かと、近づく家族連れはもちろんUターンしたことは言うまでもない。
また、『ちいせい!』『冷たさで縮んでいる〜!』の嬌声もあったようである。
あぁ、さぞや気持ちが良かったであろう。
想像するだけで、武者震いがする〜。なんのこっちゃ!

そして、ずぶぬれになった2人を入れたメンバーも帰ってきて、
バーベキューの最後のツメ。
焼そば!
もう、食べらな〜い、と言いながらも全部、平らげてしまった貪欲な面々たち。
そして、つめたい川の水で冷やされたスイカの出番だ。
これまた、甘くおいしかった!
極楽、極楽。

しかし、それまで、晴れ渡っていた空がみるみるうちに暗くなり、突如、雷鳴が轟き始めたのである。
あの事件が、山の神を怒らせてしまったのであろうか?

そそくさと、バーベキュー大会は急きょ、終了。
後片付けに取りかかる。
雷は近づいて来ているようである。

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